カセットテープに録音された昔のサウンドを蘇らせる!


まえがき

今回は、私が所有している、今から20年前に録音されたカセットテープが音源です。

このカセットテープは、20年以上前のTDK SD:C60が2本で、
1980年の12月17日に、東京のとある大ホールで行われたロックコンサートが録音されています。

当時私は、新聞の朝刊に「当日券あり」という情報が載っていたので、 慌ててこのテープを2本と、SONYのモノラルポータブルカセットテープレコーダー (ポータブルといっても、現在の外付けCD-ROMドライブほどの大きさがある。当時は、WALKMANの第1号機が出た翌年だったと思う。)を スポーツバッグに詰め込んで、電車で会場に向かいました。

会場には、開演の3時間ほど前に着いたと記憶しています。
当日券の売り場に並び、手に入れた席は、A席 \3,000(2階 南スタンド X列8番)でした。
幸いステージに対して真っ正面の席でしたが、2階とはいっても事実上は3階の一番上でした。
テープレコーダーが大きいので、置き場所が無くて仕方なく自分の足元のコンクリートの床にに置きました。
もちろんマイクはテープレコーダーの内蔵マイク(モノラル)のみです。 マイクの位置は、床から高さ20cmくらいで、前は前列の席でふさがれた状態です。

コンサートが始まり、録音を開始しました。
コンサートは、1時間半から2時間ほどかかると思われましたが、準備をしていなかったので、 手元にあった60分テープ2本しか持ってきていませんでした。
したがって、連続して録音できる時間は1回につき30分です。 コンサートの進行状況をみながら、1本目のA面からB面へ、2本目のA面へ、 2本目のB面へと3回テープチェンジをしなければなりませんでした。
1回目は曲の合間に行いましたが、次の曲の頭が切れてしまいました。
2回目は、運悪く曲が長くて、ドラムソロの間にテープが終わってしまいましたが、 めげずにドラムソロの途中から録音を再開しました。
3回目は、アンコールを要求する拍手を長めに録音してしまった為に、 アンコールの2曲目のエンディングの途中で行わなければなりなせんでした。

結果として、録音された音は、床の隙間や席と席の隙間から上がってくる音と、 天井からまわってくる音しかマイクに届いてこなかった為と、 もともと音楽のコンサートを行う為のホールではない為、 さらにバンドの性格上、通常よりドラムのバスドラムの音量が大きい、 などの原因により、低音ばかりのボコボコの音になってしまっていました。
また、客席で録音している為に、拍手や声援が大きく録音されてしまっています。
さらに、音量が大きかったのと、テープレコーダー本体の録音回路に内蔵されているコンプレッサー (自動的に録音レベルを調節する回路)が旧式の為に、演奏が始まると急に録音レベルが小さくなり、 演奏が終わって静かになると徐々に録音レベルが大きくなってくる為に、 本来、大きい音であるはずの部分が小さい音になり、 小さい音のはずの部分が大きな音で録音されてしまっていました。
おまけに、他のテープレコーダーで再生すると、スピードが速くなってしまう事に気が付きました。
どうやら録音に使ったテープレコーダーは、回転スピードが遅かったようです。

当時はそれでもそこそこ満足していたのですが、 何年か経ってしばらくぶりにそのテープを聴いてみると、 随分とテープの回転が速いのと、ギターの音が聴き取りにくい事が気になりだしました。
さらに、コンパクトディスク(CD)が発売され、DAT(デジタルオーディオテープ) などが登場してくるにしたがって、しだいにカセットテープを聴く機会も無くなりました。

あれから20年が経ち、私もパソコンを使うようになり、 デジタルで波形編集を行える環境が整いましたので、 今回、このテープをまともに聴けるように編集する事に挑戦してみたいと思います。


問題点
  1. ピッチが狂っている(およそ半音高い)。
  2. 低音が出過ぎである。
  3. カセットテープなので、ヒスノイズがある
  4. 音量が不自然(コンプレッサーが利きすぎ)。
  5. 拍手が大きすぎる
  6. 曲が途中で途切れている

これらの問題を改善して、編集し、最終的には2枚組みのCD(CD-R)として完成させる事が目標です。


対処法
準備
カセットデッキからパソコンに音源をオーディオファイルとして取り込む。 (複数曲連続して演奏されている場合は、連続している部分を1曲として扱い、 最終段階で波形編集ソフトで1曲づつにカットする。)

編集

  1. 波形編集ソフトで、全てのファイルをピッチシフトする(半音下げ)。
  2. 音楽編集ソフトでイコライジングをする。
  3. 音楽編集ソフトでノイズリダクションを施す。
  4. 音楽編集ソフトで、コンプレッサー、リミッター、ゲートなどで対処する。
  5. 音楽編集ソフトでミキシング(音量のバラつきを修正)しながらデジタルアウトしてDATテープに録音する。
  6. 5で録音したデータを再びパソコンに取り込み(デジタル接続)、 波形編集ソフトで仕上げ(複数曲連続演奏ファイルの切り離し、 ノーマライズ、フェードイン、フェードアウト等) をして、AIFFファイルに変換して保存。
CD-R制作
出来上がったAIFFファイルを、曲順、曲間等を考慮して、 CD-R作製ソフトでCD-Rに編集する。

結果
  1. デジタルでピッチシフト(ダウン)したが、特に問題無く元々演奏されたと思われる音程に変更できた。
  2. ドラムの音色を損なわない様に、しかも出過ぎている低音の周波数域はカットした結果、かなり聴きやすくなり、カーステレオ等でもスピーカーはビビら無くなった。
  3. 耳障りなノイズを増やす事無く、高域を増す事に成功。聞こえなかったハイハットの音も聞こえるようになった。
  4. 音楽編集ソフトのオートフェーダーにより、要所要所で音量補正して、不自然な音量の変化を修正できた。
  5. 音楽編集ソフトのオートフェーダーにより、音量を修正。さらに、フェードアウト等で調整した。
  6. 分離してしまっている曲は、不自然にならないところで結合させて、1曲にまとめた


感想
今までとても聴けなかったテープが、普通に聴けるようになった。 音程が正確になり、イコライザーでいちいち補正しなくてもよくなった。 しかも、今までドラムの音に埋もれていた、ギターやキーボードのフレーズが聴き取れるようになった。 コンサート会場の客席の足元でのモノラル録音である事を考慮すれば、かなり良い状態になったと思う。 下手な海賊版のCDよりはずっとマシになった。 これからは、ずっと良い音で聴けるのだ。テープでは伸びたり、切れたりが心配だが、CD(R)にしておけばとりあえず心配ない。 これからしばらくは、私の愛聴盤になるだろう。